Love their

左側に青い海、右側に立ち並ぶﾎﾃﾙ。その奥ににﾖｯﾄﾊｰﾊﾞｰ。


この絵、どこかで見覚えがある。


レイはもう一度その写真の中に写る絵をﾏｼﾞﾏｼﾞと見た。



この絵。



間違いない。



レイは再び目を細めて穴が開く位に見入った。



同じ絵だ。



大きさも見る方向も、そして色使いも。


同じだ。



小さい頃に手の届かない玄関の壁に掛けてあった絵と同じだ。



ﾊﾟﾊﾟが居なくなってから見ることがなかった。


ﾊﾟﾊﾟが居なくなった日に壁から無くなった絵と同じ。


レイは何度も何度もその写真の中に写る絵を眺めた。


もう見ることもないと思っていたこの絵。



彼と写ることにさっきまで感じなかった違和感を覚えながら込み上げる懐かしさで胸がいっぱいになった。


どうして、彼と一緒に？？


写真に写る彼の頭のすぐ後ろに掛けてある絵。


手を伸ばさなくても彼の届く位置にあった。



小さい頃、どんなに触れたくて。


踏み台を使おうにも手を最大限に伸ばそうにも、叶うことのなかった絵に触れてみたいという願い。


ﾊﾟﾊﾟに抱っこして貰った時だけ、真っ正面に見えたこの絵が。