Love their
彼のすぐ後ろに掲げられている。


ビニールのツルンとした表面の上からその絵を指でなぞる。

写真の右下隅に刻まれた日付。


1988.3.24


彼が12歳、私が4歳。


パパが居なくなったのも、私が4歳の時だった。


レイはまさかと脳裏に湧いてくる考えを強引に消しながらも写真から目が離せなかった。


どうして、ここに…?


そんな筈ない。あるわけない。


パパが持ち去ったはずだから。


こんな絵、きっと同じようなものを誰が持っていてもおかしくない。


似たような絵なんだ。


レイは自分に言い聞かせ過去に見た絵を頭に浮かべて写真の中の絵と見比べる。

そうよ。


似たものなのよ。


それは普段よく目にするハワイのダイヤモンドヘッドの山をバッグに鮮やかな海とワイキキの街並みを捉えた写真とはまったく逆からのアングルで書かれた絵。


誰にだって目にする光景のはず。


だから同じような絵があっても構わないはず。



レイはウンウンと次から次へたぐりよせる言い訳のようなもので頭の中を否定した。

そんなことあっていい訳ないから。


違うんだ。これは。


パパが持ち去ったものじゃないんだ。

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