Love their
そんな訳で久しぶりに訪れるサトルの部屋の荒れようを想像しｿﾞｯとしつつ、携帯を開けて画面を見た。


あれだけｺｰﾙしたのに折り返し電話があってもいいはずなのに。


着信はなかった。


ここまで来て買い物まで済ませながら、もし出張とかあり得ないけど、そうだったらどうしよ…。


店内から流れてくる“今日の日はさようなら”のﾒﾛﾃﾞｨが客の足を少し早めているのか慌ただしい雰囲気が更に感じ取れた。



考えても仕方ないし、押しながら歩いて行くか…そう思って携帯をﾊﾞｯｸﾞに入れようとした時に携帯が鳴った。


慌てて受話器を耳に当て出ようとしたが、ﾒｰﾙだった。


『どうした？何かあった？』


サトルからのようやくの返事だった。


っていうかあれだけ電話したのに返事はﾒｰﾙかよっっと半ば怒りを感じながらも直ぐに返信ﾎﾞﾀﾝを押してこの状況を打ち込み送信した。


送信し終えて狭くひしめきあう民家の屋根の連なりを眺める。


道が狭いせいか流れる空気も生暖かい。


生活の匂いを感じる。何処からか夕飯の魚の匂いが風に乗ってやって来る。


場違いな自分が居るような気がして不安なような、どこか安心出来るような変な気持ちになった。
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表紙・目次

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