Love their
ママが私に何て答えていたのかは覚えていないけれど、


ママの目は涙を流さず泣いていた。



その目だけが私の脳裏に焼き付いて離れなかった。



悲しそうな目を見るのが辛くて、



いつしか聞くのをやめた。


パパが帰って来たら怒ってあげるから。



ママ、そんなに泣かないで……。



レイがちゃんとパパに言ってあげるから……。



ママは笑ってこう言った。




――レイを愛しているのはママだけだよ…。





あれから20年近く経っても私の小さい頃の一番の思い出、記憶。



年を重ねていろんな人に恋をしたけれど、



決して恋した相手にパパを重ねていた訳ではない。



愛情に飢えている、なんて表現を自分に当てはめるのすら妙に冷めた目で見るもう1人の自分。



そのもう1人の自分が心を許した相手がサトルだけだった。



身体を重ねる度に冷めていく今までとは違って、



私、とは違うもう1人の自分が、



サトルの腕を離さなかった。


いつまでも巻きついていようとした。



抱かれる度に何度も何度も名前を呼んでくれたのが、



サトルだけだった。
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