Love their
「いいよ、気にしなくても」

レイは部屋を漂う煙を鼻で感じながら言った。


サトルの煙草の匂いだ。


さっきまで彼のことが頭でいっぱいになっていたが、匂いで現実に戻された。


煙草を吸わない私は煙草の匂いに敏感だ。


吸う人が個々に好みがあるように、この匂いはそんなに嫌じゃなかった。


中にはどうしても避けたいくらいの煙草もあった。


サトルと一緒に過ごすうちに慣れてしまったんだよね。


当たり前のように過ごした年月が、あらゆる場面で自分の好みと変わる。


積み重ねは自分の感覚ですら変えてしまう。ある意味怖いな、と思いながら空になったスーパーの袋を手に取った。



「あれ?里子ってここのコンビニ行くんだ」


何のこだわりか、里子は置いてある商品が好みじゃない、と敢えてこのコンビニには行かなかったような。

そう思いながら、レイは袋の空気を抜き折りたたんだ。



「あぁ、……たまにはね」

レイを横目で見ながら里子は短くなった煙草を灰皿に押し付けた。


「そうなんだ。私は近いからいつもそこだけどね」


「それよりさ、話戻すけど…」


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