誰もしらない世界
翌日、歩が目を覚ますと隣にいたはずの杉浦はいなくなっていた。
真っ白いシーツにくるまれたまま、クシャクシャな髪の毛を軽く束ねてバスローブをきたあと洗面所へといつものように歩は向かう。
杉浦と出会ってから歩の生活は180度変わってしまった。洗面所の鏡に映る自分の姿をぼーっと見つめながら考える。

目覚めにはいつも杉浦はいなくなる。昨日の杉浦の言った言葉が歩の消した過去を思い出させていた。整形前の私とおなじなのかな…杉浦さんは幸せになりたくないのかな。きっとお金で満たされない物を欲しがっているに違いない。歩はそう思った。
シャワーを浴びたあと、歩はほとんどしない料理をすることにした。きっと杉浦は喜ぶはずだ。そう思い、簡単な目玉焼きとハンバーグを作り冷蔵庫へといれた。
小さな紙に、温めて食べてね。そうかいて机の上に置いて歩は杉浦の部屋を後にした。
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