社長に求愛されました


性格上傲慢な態度を取りがちな篤紀は、ちえりに対しても変わらず、どこかに出向く時にはバイトにも関わらずちえりを無理やり連れて行き、ランチも強制的に一緒にとらせる。
そしてなんだかんだ理由をつけては、ちえりの部屋にまで上がり込むという、完全なパワハラとして訴えられるような行動を篤紀はこの一年間堂々と続けていた。

でもパワハラ行為うんぬんは、ちえりにその気がない場合の話。

篤紀が狙って堕ちない女の人なんていない。
そう思うほど、ちえりも篤紀に惹かれているのだ。

だから、例え他人から見たらパワハラにジャッジされる行動も、セクハラにジャッジされる行為も訴えてやろうなんて風には考えていなかった。
篤紀の気持ちは正直すぎる行動のおかげでちえりも分かっていたし、それを嬉しくも感じている。

当たり前だ。
自分の好きな相手から、全身で好きだと言っているような態度を取られているのだから。

正直に嬉しい。だけど、だからといって付き合うだとかそういう選択肢を選ぶには少々難しい理由がちえりにはある。

そんなこんなでこのふたり、想い合っていながら恋人ではないのだ。



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