社長に求愛されました
「おまえは冷静だし、俺との事も将来を見据えて考える事ができる。
井上からおまえの悩んでる事を聞いた時、驚いたけどそこまで考えられるのを、おまえらしいとも思ったんだ。
それに……おまえがそう言うなら、実際そうだろうとも思った」
篤紀の言葉を聞いていたちえりが、きゅっと唇をかみしめる。
ちえりの出した答えを肯定しているとも思える篤紀の言葉が、胸に痛かった。
篤紀は一体、何のために自分を探しにきたのだろうと、そんな事を思う。
自分が出した答えが、離れるという選択肢が正しいと言うのなら、そのままにしておいてくれればよかったのに、なんで必死に探してまでこんな話をするのだろう。
もしも篤紀が、ちえりの出した答えに反対しているのなら、探し出しにきた意味も分かるのに。
ひとりで決めてるんじゃねぇ、バカじゃねぇの!と、素直な想いをぶつけてくれたら……。
そう考えてから、反対してくれると思っている自分に気づいたちえりがハっとする。
篤紀に連れ戻される間もこの部屋にきてからもずっと、自分の出した答えに噛みついて反対して欲しかった自分に気づき……そんな自分勝手な自分にまた自己嫌悪がのしかかる。