社長に求愛されました


仕事は、今までの説明にもある通り、黒崎会計事務所の若き社長及びマスコットキャラクターだったのだが。
そのうちなんとホテル勤務になるらしい。

新しい勤務先はプリンスホテル・K。Kとは黒崎のKであり、早い話がプリンスホテル・Kは黒崎篤紀の実家が経営するホテルである。
そして黒崎篤紀は、正真正銘、プリンスホテル・Kの御曹司だった。


「なんで教えてくれなかったんですか……。社長がプリンスホテル・Kの跡取りだなんて今朝までただの噂だと思ってました……」
「だっておまえ聞かなかったし。おまえ、俺に対して基本興味ないから気にもならなかったんだろうけど」
「別に興味がないわけじゃ……」
「じゃあなんで俺の家柄どころか今住んでる部屋も聞こうとしねぇんだよ。おかしいだろ。
俺はおまえの住んでる部屋も家賃も家庭の事情もほとんど把握してんのに」

この差はなんだ、と機嫌悪く言われて、ちえりはそろっと篤紀から視線を外した。
けれどもそのまま篤紀が無視できないような視線の矢をチクチクと放ってくるのを感じて、諦めて目を合わせる。




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