社長に求愛されました


そんな会話をするふたりを、綾子はちえりの斜め後ろから観察するように見ていた。

どうも和美が気に入らないのだ。
篤紀とちえりの邪魔をするからだとか、プライドが高くて生意気そうだとかそういう理由だけじゃなく、なんとなく本能的に。

だから、一歩離れた場所から、ここまでの会話は普通だなと思いながら見ていた矢先。
和美がクスっと笑ってちえりを見た。

「でも、まさかバイトの立場でパーティーに出席するとは思わなかったわ」

急に突き付けられた鋭い言葉に、ちえりが瞬間的に言葉を失うと。
そんなちえりの戸惑いを楽しむように、和美が続ける。

「ここに呼んだのは、一応立場のある方ばかりなのよ。
黒崎さんのところには、何年もお世話になってるしいい機会だからって社員の皆様を招待させて頂いたんだけど……。
普通、バイトだったら遠慮しない?」
「あ、ごめん……。私がいる事で他の方も不愉快になるようならすぐ帰……」
「ううん。いいの。もう来ちゃったんだし仕方ないし」

だったらわざわざバイトうんぬん言う事ないだろと怒りを込めたツッコみを綾子が心の中でしていると、和美が話題を変える。



< 78 / 235 >

この作品をシェア

pagetop