恋はしょうがない。~職員室であなたと~
真琴が図説の写真をコピーするために立ち上がろうとすると、隣の古庄がそれを制した。
「こういう仕事は俺がするから。どこをコピー取ってくればいい?」
そう言ってくれたものの、顎で使うような気がして真琴は躊躇した。
「手伝うために俺はここにいるんだから、遠慮なく言ってくれなきゃ」
古庄からそう促されて、真琴はおずおずと図説の中の写真を指し示す。
「それじゃ、これをお願いします」
「わかった」
古庄は頷くと、足早にコピー機に向かい、すぐに任務を果たして戻ってきた。
「他にすることは?問題集のどこを使うのか決まっていたら、俺のパソコンで文字起こしするよ」
真琴は、科目も違う古庄に手伝ってもらえることなどない……と思っていたが、古庄は自ら仕事を見つけてくれる。
問題を作るに当たっての機転といい、古庄は自分など到底及ばない“出来る人間”なのだと、真琴は痛感する。
普段新聞ばかり読んでいて、あくせく仕事をしている風ではないのに、きちんとやるべきことをこなしている古庄の余裕を、いつも真琴は羨ましく感じていた。