蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
ぎゅっと握りしめた封筒の中に、円形の小さな固い手触りを感じて、拓郎は封筒を逆さに振ってみた。
コロンと、手のひらに転がり出てきたのは、銀色の指輪。
プラチナ台に、藍の誕生石のダイヤモンドと小さなトパーズがあしらってあるその指輪は、昨夜、拓郎が藍の誕生プレゼントに送ったものだ。
『エンゲージ・リング』を兼ねて。
指輪を贈ってプロポーズをしたとき、『ありがとう』と涙を浮かべた藍の笑顔が、脳裏に鮮やかに浮かぶ。
あの笑顔に、嘘はなかった。
「藍……」
未練でも、何でもいい。
もう一度、会わなくては。
会って、確かめなくては。
ここから、前に進めない――。
拓郎は、目を閉じて、指輪をギュッと握りしめた。