蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
2 【出会い】

拓郎が彼女、大沼藍 (おおぬま あい)と出会ったのは昨年の十一月。


無性に『朝日』が撮りたかった拓郎は、神奈川県の『港が見えるヶ丘公園』に来ていた。


その名称通り、横浜港を一望できる小高い丘に造られた公園で、日没から夜にかけての景色の素晴らしさは、言葉に出来ないほど美しい。


山下公園、マリンタワーと並ぶ定番の観光&デートスポットなので、昼間は観光客、夜はカップルで賑わっている。


だが季節はもう冬。


それもまだ、日の出前の薄暗い時間帯と言うこともあり、さすがに散歩をする人影すらいない。


拓郎は結構な底冷えの中、日の出を撮るべく一番見晴らしの良い場所に陣取った。


吐く息が白い。


夜が明ける前のシンと染み込むような冷気が、むき出しの頬に突き刺さるが、子供と一緒で、こう言う時の早起きも寒さも気にならなかった。


こういう所が、『母性本能をくすぐるタイプ』と、称される所以かもしれない。


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