蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

確かに童顔のせいもあってか、昔から年上女性に好かれるきらいはある。


だが、往々にしてそれが『付いていけない』と、別れの理由にもされることも多かった。


実はつい最近も、『私とカメラのどっちが大事なの?』と問われて返事に詰まり、『もう付いていけない』と言われて一年ほど付き合った年上の彼女と別れたばかりなのだ。


どうも、『好きだ』と言われて付き合い、『付いていけない』と言われて別れるパーターンが定着しつつある、今日この頃なのだ。


カメラは商売道具で、ライフワーク。いわば、芝崎拓郎という人間を構成する一部分だ。


自分とどっちが大事なのと問われても、拓郎には答えようがない。


嘘を言っても仕方がないし、嘘を言ってまで相手を留めておこうと言う執着心も湧かないのだ。


根本が、恋愛に向かないタイプなのかもしれない。


「もうそろそろかな」


ボソリと呟くと、拓郎は、白み始めた水平線を見詰めながら、日の出の瞬間、シャッターチャンスを狙ってカメラを構えた。

と、その時だ。


不意に、覗くファインダーの中に、人影が入った。


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