蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
「ごめ……んね」
そう言って藍は、もう二度と動くことのない、膝の上の白い子猫の頭をそっと撫でる。
撫でる手の甲に、ぽたりぽたりと涙の滴がしたたり落ちていく。
声を上げることもなく、激することもなく、子猫の頭を撫でながら静かに涙を流す藍の姿を見て、拓郎は胸を突かれた。
――なんて泣き方をするんだ。
声を上げればいい。
泣きわめいたって構わない。
でも、こんな風に泣かれると、どうして良いのか分からなかった。
『君のせいじゃない』
『しらたまは、きっと幸せだったよ』
言ってやりたい事はいくらでも浮かぶが、どれも藍の慰めにもならない気がして、喉の奥で引っかかった言葉は出てこない。
――不甲斐ない。
十も年上だと言うのに、好きな女の子が悲しんでいるこんな時、気の利いた言葉の一つも言ってやれない自分が拓郎は不甲斐なかった。
そして、結局。
拓郎はそのまま、静かに涙を流す藍の隣で、ただ黙って一緒に座って居ることしか出来なかったのだ。