蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

息付いていた、小さいけれど確かな命。


それが、あっけなく失われるさまを目の辺りにした藍は、自責の念もあって、今までになく落ち込んでいた。


しらたまが、その短い生を終えてから丁度一週間。


今日は、2月14日。


時計の針は、もう少しで夜の7時を指そうとしている。


つい1時間ほど前までは、『バレンタインだから、一緒にチョコレートを作りましょう♪』と言って、美奈が娘の恵を連れてアパートに遊びに来ていた。


まだ、ショックから完全に抜け出しては居ないが、恵と一緒に童心に返ってクッキーの型抜きをしたり、味見をしたりするのは楽しい一時だった。


ただ、楽しいと思ってしまう自分を後ろめたく思う一面も有るのは否めなかったが――。


それでも、しらたまの事があって以来、落ち込み気味な自分を励ましに来てくれたのだろう美奈の心遣いが、藍はありがたかった。

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