蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
『一年に一回、女の子から告白出来る日なんだから、キスの一つでもお見舞いしてあげなさい。少しはあの唐変木も、考えを改めるでしょ。頑張ってね♪』と、美奈はいつものごとく、少し人の悪い笑みとアドバイスを残して返っていった。
藍は、コタツの上に並べたいつもよりちょっと豪華目な料理を眺めながら、美奈の言葉を思い出して小さな溜息をついた。
しらたまの亡骸を膝に抱いて、ただ涙を流すしか出来なかった自分の隣にずっと座っていてくれた拓郎。
何か特別な言葉をくれた訳じゃない。
でも、ずっと隣に座って居てくれた。
すぐ隣に感じる気配が、温くて。
ただ側に居てくれることが、とても嬉しかった。
出会いの日。
凍てついた寒い冬の夜。
手を差し延べてくれた、優しい人。
初めは、ほんの少しの間のつもりだったのに。
その優しさが、あまりに心地よくて。
いつの間にか、側に居ることが当たり前になって、離れることが出来なくなっていた。
そして、心の中で願ってしまう自分がいることに気付いてしまう。