蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
これ以上近付いたら、何処まで赤くなるのだろう?
「あ、あの……、芝崎さん?」
至近距離で拓郎に見詰められた藍の声は、恥じらいで小さな呟きになる。
一度心を決めてた拓郎は、すっかり自分のペースに藍を巻き込んでしまった。
亀の甲より年の劫。
ペースを乱されっぱなしだったが、これでやっと面目躍如だ。
「芝崎さんじゃなくて、拓郎」
「はい?」
「もういい加減に、『芝崎さん』は卒業してもいいと思うんだけど?」
「拓郎……さん?」
「さんは、余計」
「拓……郎?」
「合格。俺もこれからは『藍ちゃん』じゃなくって、『藍』って呼ぶことにするよ」
見つめ合う瞳に、お互いの瞳を映しあう。
「拓郎?」
「何、藍?」
『何だか、くすぐったい』
ただ名前で呼び合うだけなのに距離がぐんと近くなった気がして、二人は少し照れたような表情で顔を見合わせる。