蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
長い自失の後、拓郎はまず大家の君恵の所を訪れ、藍が立ち寄っていないか確かめにきたのだが、半ば予想していた通り、藍の姿は無かった。
よくよく思い返せば、突然言いだしたあの動物園行き。
あれが予兆だったのだ。
そして、その帰りに藍が買ったレターセット。
家に手紙でも書く気になったんだろうと、拓郎は思っていた。だが、置き手紙に使われたのは、そのレターセットだ。
おそらく藍は、以前からアパートを出ていくことを考えていたのではないか?
お前は、何を見ていたんだ。
一人で舞い上がって、いい気になって、藍の心の奥にあるものを見ようともしなかった。
お目出度いにも、程がある。
後悔と共に、苦い思いが拓郎の胸の中を駆け巡る。