無口なカレシの愛し方
無口な彼は恋人になってもやっぱり無口なままなので、私は相変わらず彼の少ない言葉から本心を読み取る作業をたのしんでいる。
けど、以前よりは全然ずっと、その気持ちは読みやすい。
優吾は甘えん坊だ。体は大きいのに子供みたいに淋しがり屋で、ふたりきりの時は大抵私にくっついている。
「リン、いい匂い」
ソファーに座って長い足の間に私を挟み込み、後ろから抱きしめながらそう言うのが彼のお気に入り。
そしてゆるゆると長い指で髪を撫でながら、やがてその指先は私の唇へと辿り着く。
これが、キスの合図。
優吾の大きな手は、おしゃべりだ。
言葉の代わりにいっぱい気持ちを伝えたがる。優しく、激しく。嬉しそうに、切なそうに。
行為の最中に、優吾は何度も私の髪を撫でる。多分、愛しいんだろう。そうだといいな。
勝手に彼の愛情を感じ、嬉しくてその手に私の方から猫のように擦り寄ると、優吾は目を細め今度は頭を優しくナデナデしてくれる。
大きな体に大きな手。
抱きしめられればスッポリ包まれてしまうし、頬を撫でられれば顔が覆われてしまう。
行為のあと、穏やかな顔で眠る彼の懐で甘えながら私は思う。
以前、彼を森の大木みたいだと感じたのは正解だな。と。
彼に包まれてる時のこの安心感。優吾の前世は絶対に森の主だ。ちがいない。
そんな事を真剣に考えていたら、眠っていた優吾がふと目を覚まし、懐でモゾモゾしてる私を見つめた。
「寝ないの?」
「ううん。寝る。もう寝るよ」
見つめ返しニッと笑って見せると、優吾は眠たそうな目をどこか嬉しそうに閉じ
「寝なさい」
と、大きな手で私の瞼を優しく覆った。
寝ぼけていたからか珍しい彼の命令口調にドキリと胸が高鳴る。
温かい暗闇に覆われ閉じた瞼の下、彼の言葉の真意をぼんやり解析しながら素直に眠りに落ちていった。
優吾の手からは、さっきまでずっと撫でていた私の髪の香りがした。
おわり


