*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「………ふふ、それでね。


その時、隣のお邸の童が………」






悪戯っぽい表情で幼い頃の思い出を話していた母が、ふと顔を上げた。






「………あら、もう、こんな時間なのね」






望月が空高くに浮かんでいるのを見て、独り言のように呟く。






「あなたたち、早く帰らなきゃ、おうちの方が心配なさるわよ」





「あぁ………そうですね」





汀もつられたように月を見上げて、小さく頷いた。





「とっても楽しかったわ。


本当にありがとう。



あなた、とっても良い方ね」






母から無邪気な言葉をかけられて、汀は照れくさそうに笑った。






「身に余るお言葉です。


私こそ、本当に楽しくて、嬉しくて………懐かしい時間を過ごせました。


………ありがとうございました」






名残惜しそうに頭を下げた汀を見て、母はふふふと笑いを洩らす。





そして、これまで無言で会話を聞いていた灯に目を向けた。







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