*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫








「…………ぅわぁ。


きれい…………」






桜の大木は、庭一面に薄紅色をまき散らしていた。





樹の根元に座って梢を見上げると、望月の月明かりに照らされた白い花々が、夜空を埋めつくしている。







「夜桜ねぇ。


満開だわ、ほんとに、きれい………」







うっとりと桜を眺める汀の横で、灯も夜空を仰いだ。






(…………疲れたな………。



長い一日だった………)





やっとのことでほっと一息ついてみると、身体が泥のように疲れきっているのを感じた。





囚われていた地下牢を抜け出したことなど、遥か昔の出来事のように思える。






その諸悪の根源とも言える汀に視線を移し、灯は思わず笑ってしまう。






(…………こいつといると、本当に、一日が長い。


時の流れが遅くなる)







汀と出会う前、いつも時間を持て余していたのを思い出す。





白縫山の村人たちとも馴染みきれず、ひとり村の外れで樹に登り、空を見上げていた。






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