箱入り結婚のススメ
「舞。ちょっと手伝って?」
「はい」
キッチンから、母の声が聞こえてくる。
こういう場合、室賀さんを残して行ってもいいのかと戸惑ったものの、彼が小さく頷いてくれたから、私は席を立った。
ケーキを箱から出している母の隣で、紅茶をカップに注ぎながら、耳は応接室に向けていたのに、父と室賀さんの会話はよく聞こえない。
「誠実そうな人ね」
「えっ? はい」
「行きましょう」
とりあえず第一関門は突破した、ということだろうか。
この間、室賀さんのことを告白してから、母の態度がなんだか優しい。
お盆を持ってくれた母に続いて、再び応接室に行くと、室賀さんは真剣な顔で父と話していた。
「それでは三洋物産に入って、六年ということだね」
「はい。学生の頃に一年ほどアメリカに留学しておりましたので、同期よりひとつ年上になりますが」
室賀さんに留学経験があるなんて、知らなかった。
貿易の仕事をしていて海外出張が多いとは聞いていたから、英語が堪能なのだろうとは思っていたけど。