箱入り結婚のススメ
「それで舞とは?」
「はい」
話が核心に入った。
「舞さんとは、舞さんのご友人の紹介で知り合いました。
その方の学生時代の仲間が、三洋物産の広報におりまして」
「麻子さんだね」
「はい」
父も何度か遊びに来たことがある麻子のことは知っている。
「実は舞さんにお会いしてから日が浅いのですが、舞さんの優しいところや、上品な振る舞いに惹かれ、結婚を前提としたお付き合いを許していただきたいと思い、参りました」
室賀さんは決して焦った様子もなく、はっきりとそう言うと、ソファから降りて床に正座し父と母に深く頭を下げた。
まるで、結婚の挨拶のように。
彼は父と母の前で「結婚を前提として」と口にしてくれた。
それは、決していい加減な気持ちでないということの証だ。
結婚の見通しがなければ、幼稚園を辞めさせられるからというだけではないと思う。
だって、こうやって相手の親の前で"結婚"という言葉を口にするのは、そんなに簡単ではないはずだ。
私達ふたりだけの問題ではなくなったからだ。