箱入り結婚のススメ
彼とデパートに行ったときは、小さな頃、父と母と三人でよく買い物に行ったことを思い出していたし、食事をしながら、父と母にも食べさせてあげたいと無意識に思っていたし……。
室賀さんは、私が最初から家に帰るのだとわかっていたのかもしれない。
『十分に愛されてきた』と彼はさりげなく言ったけど、今の私があるのは、やっぱり父と母のおかげなのだ。
「来週、アメリカなんだ。少し会えないけど……」
「気をつけて、行ってきてください。お帰りをお待ちしてます。あっ……」
恥ずかしくて少しうつむきながらそう言うと、握られていた手を引かれて、彼に抱き寄せられた。
私よりずっと大きな彼の胸にすっぽりと埋まってしまった私は、驚きすぎて言葉が出ない。
だって、こんなこと、初めて……。
「ごめん。俺……」
室賀さんが“俺”というのを初めて聞いた。
だけど、またひとつ彼との間の垣根がなくなった気がして、嬉しい。