箱入り結婚のススメ
再び彼の車に乗った私は、家までの三十分ほどの道のりを、思いっきり楽しんだ。
室賀さんは、英語はペラペラだけと、実は理系が苦手だったということ。
四つ年上のお兄さんがいて、そのお兄さん夫婦に男の子が生まれ、最近"おじさん"になってしまったということ。
知らなかった彼の姿が、どんどん見えてくる。
きっと彼は、意識して明るくしてくれているのだ。
「舞さんは、なにをしているときが一番楽しい?」
「えっと……なんでしょう」
室賀さんに突然質問されて、言葉を濁す。
最近一番楽しいのは、あなたのことを考えているときです。なんてとても言えない。
家まではあっという間だった。
「舞さん」
私の家の前で車を止めた室賀さんは、私のほうに体を向けて口を開いた。
「はい」
「今日はありがとう。すごく楽しかった」
「私も、楽しかったです」
すごく。
そう付け足したかったけれど、恥ずかしくてできなかった。
「それに、手袋もありがとう。アメリカに持っていくよ」
「私も、大切に使わせていただきます」
「うん」
室賀さんはほんの少し私を見つめた後、車を降りて助手席のほうへ回ってきた。