箱入り結婚のススメ
「速水先生、待って」
大きな声で私を呼んだのは、小栗先生だ。
「僕、車出しますから」
「はい。すみません」
いつも行く手芸店は近くにあるけど、少し足を延ばすととても安い店がある。
「僕は縫い物は苦手だし、このくらいお安い御用」
小栗先生はいつも車通勤をしていて、職員用の駐車場からすぐに車を回してきてくれた。
「僕がひとりで行ければいいんだけど、やっぱりわからなくて」
松永先生に頼まれたのは、サテンの布のほかに六十番のスパン糸と、スパンコールのブレードだ。
お店の人に聞けばそれなりのものは探せるけれど、スパンコールは園にある布に合いそうなものを探してきてと言われていた。
「小栗先生は別のことで大活躍ですし、私もけがをしてしまってから、かなりご迷惑をおかけしています。
すみません」
「いやいや、そんなの気にしないで。
速水先生って、片手でもミシンを使えるなんて、器用なんだね。
僕なんて両手でも指を縫っちゃうよ」
「それは大変」