箱入り結婚のススメ

「聞いてない」

「な、なにをでしょう?」

「男の先生がいるなんて、少しも聞いてない」

「……はい」


確かに、言ってはいない。
だけど、言わないといけなかったんだろうか。

室賀さんは私を運転席のドアの前に立たせると、私の体を挟むようにドアに手をついた。
彼との距離が近い。


「手袋……」

「はい」

「しててくれたんだね」

「もちろんです。私、本当にうれしくて」


突拍子もない会話に戸惑いつつ、なんとか返事をすると、彼は眉間にシワを寄せた。


「俺だって、すごくうれしくて。毎日毎日、大切につけていたんだ」

「……ありがとうございます」


彼が自分のことを“俺”と言うのは二度目だ。


「君に会いたくて会いたくてたまらなかったのに」


彼は一度ドアをドンと叩いて、私から離れた。

< 203 / 450 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop