箱入り結婚のススメ

「会社を継ぐのには、社会的な信用が大切だとずっと言われてたみたい。
それには、結婚して身を固めることがひとつの条件なんだって言われて、広大はそれが嫌で家を出たの。
だから、家業を継ぐということは……」

「結婚、か……」


麻子は小さく頷いた。


「だけど、福岡に行くかもしれないじゃない。
遠距離になっちゃうけど」

「うん。その可能性はあるんだけどね。
広大は家が嫌いなんて言いながら、ひとり息子の責任みたいなものも感じていると思う。
あの人、そういう人だから」


『そういう人』と言ったとき、麻子は、ほんの少しうれしそうに笑みを漏らした。
井出さんのそういう責任感の強いところが好きなのだろう。


結局ふたりで考えたところでなにも答えが出るはずもなく、なんともモヤモヤした気持ちのままで別れた。

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