箱入り結婚のススメ
「速見先生、ケガは?」
希望ヶ丘幼稚園の園長先生は、厳しさと優しさを兼ね備えた先生だ。
普段、園児に対する職員の姿勢については相当うるさく、一切の妥協も許されない。
園児の命を預かっているからだ。
だけど、園児の前では常に笑顔を絶やさない人で、尊敬している。
「はい。大丈夫です」
「大丈夫、じゃないわね。
速水先生、あなたが今我慢して酷くなったら、辛いのは園児です。
担任が長くお休みするようなことがあったら、悲しむんです」
「はい」
冷たいようで温かい言葉だ。
また未熟な私を、あの子たちの先生だと認めてくれているのだから。
「遊具から太知君が落ちてきて、受け止めようとしましたが失敗しました。
でも、太知君は無事です。私は、少し腕をひねってしまいました」
「そう。あなたの行動は先生として合格ね。ちょっとみせて?」
「はい」