ビターエッセンス
だから、つい無関心を装ってしまった。

どう?どう?褒めて?褒めて?の屈託のないワンコの笑顔に上手に答えてあげられなかった。

「……ん。いいんじゃない?」


そんな言葉しか吐けない狭量な私。

さっきまで得意げだったハルの顔を曇らせたことにいたたまれなくなり、私はハルを残してさっさとお風呂へ逃げた。


シャワーを浴びながら、反省する。


若くて美しい女優さんと陽希が、あまりにも自然に微笑み合っているから、は理由にならないよね。

今までだって、女性モデルと抱き合う陽希の写真なんて、何枚も見て来たのだ。

そんな写真を美しいと思い、私自身が選んで雑誌に掲載した。

それが私の仕事だから。

ただ、何の前触れもなく繰り広げられた三次元の世界は、胸にズンと来た。

陽希が仕事に傾けている情熱を、私は知っているのに。


でも、薄情過ぎたと悔やんでも後の祭りだった。


ハルは黙って帰ってしまったのだ。

私のさして長くもないシャワーの間に。



―――――
―――

ことの顛末を話すと、ちぃさんは訳知り顔で頷いた。

「ミッチ―は、陽希があんな良い表情(かお)してCMに出たからって落ち込んでる、と?」

「隣りにいるのが何の変哲もない私で本当に良いのかなって」

「挙句に、年上だしねぇ」


ゔっ。

ちぃさん、傷口に滲みるわぁ。
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