ビターエッセンス
「今日こそ美知佳さんに会おうと思ってたのに、事務所に寄ったら社長が『ミッチーは私とデート』とか言い出してさ。仕方ないからジムで時間潰した後、俺もここに来たの。邪魔するなって、別の部屋を用意されたけどね」

待っててくれた、と知っただけで胸に甘い気持ちが広がる。

「それなのにあのクソ社長ときたら、酔っ払ってお開きになった連絡遅いし」

ブツブツちぃさんへの文句を言っている陽希。

……私のことタクシーに誘ったよね、ちぃさん。

タクシーの中でにやけている、ちぃさんの姿が目に浮かんだ。

「待たせてごめんね」

「ほら、帰ろう」

私の腕を掴んでいた陽希の手がそっと、ショートボブの髪を撫でる。

そして、ゆっくりとお酒でピンク色に染まっているはずの私の頬に触れた。

その優しい仕草に、胸がキュンとする。

彼のまなざしを見るだけで、私の心はふつふつと沸き立つ。


私を惑わせないで、いや、惑わせて。

あぁよく分んないわ、と心の中で1人葛藤していると、陽希は急に耳元に口を寄せてきた。

「これ以上そんな顔してると、ここでするよ」

「へっ、何を」

「あれやこれやイケナイこと」

陽希は慌てふためく私をよそに、わざとらしいほどの大きい音で、頭の上にキスを落としてきた。








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