your magic
赤信号で停まるたび、ふと正樹さんの顔が思い浮かんだ。

「谷川先生、手、出して。」

飴ちゃん、今日もらわなかった。今日は忙しかったのか、来なかったな。

「お疲れちゃん、ほの。」

今日は頭ポンポンしてもらってない。初めてキスをしたあの日以降、帰り際階段のあたりまでこっそりやってきて、ポンポンしてくれるのに、今日はいなかった。

「おはよう、ほの。」

今日は、朝、駐車場で会っただけだった。

会いたいな。会いたいな。正樹さんに会いたいよ。

でも、まだ仕事中だから、帰ってないよな・・・

ぼんやりそんなことを考えながら運転していたからか、気がつくと正樹さんのアパートの方に走っていた。今行ったって、いないはずなのに、吸い込まれるかのように車を走らせていた。
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