your magic
「いないはず」という考えは、アパートの下の駐車場で打ち砕かれた。アパートの駐車場、いつもの位置に、正樹さんのブルーのヴィッツが止まっていた。うそだ、と思いながらも、部屋の方を見ると、電気がついていた。

私が知らないうちに、私より前に帰っていたらしい。今日は、出張でもなかったはずなのに。

おそるおそる、インターフォンを押すと、いつもの正樹さんの声が聞こえた。

ドアが開いて、いつものにっこり笑った、優しい顔の正樹さんがそこにいた。

「おかえり、ほの。」

言葉が出なかった。

「えっと・・・・・・おかえり、じゃなかったか?いらっしゃいか?」
「違うの。なんで?」

運転中止まった涙が、またボロボロとこぼれてきた。
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