your magic
あらら、という顔をしながら、とりあえず入ってと促され、私は正樹さんの家にお邪魔した。リビングに入ると、テーブルの電気ケトルがシュンシュンと音を立てて、湯を沸かしていた。

「何か気付かない？」

コートをかけるハンガーを渡しながら、正樹さんは私に尋ねた。部屋をぐるっと見回して、正樹さんをじっと見た。コートとジャケットは脱いでいるものの、ネクタイはまだしたままだった。

「帰って来て、まだあんまり経ってないのかな？」
「正解！」

ハンガーにコートをかけると、正樹さんがそれを洋服掛けにかけてくれた。

「ねえ、ほの・・・・・・」

そういうと正樹さんは、私をふわっと抱きしめた。胸の中はとても温かくて、なんだかまた涙が出てきた。よしよしとするように、正樹さんが私の頭をなでてくれた。心の奥をほぐされるような、温かい気持ちが、少しづつ私の心を満たしていった。

「ほのはさ、司書であることを、どこか引け目に感じてるんじゃない？」

正樹さんが優しくそう言った。私はコクンとうなずいた。

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