今日は、その白い背中に爪をたてる
「ふぶっ……」



顔面がタンクトップの上にシャツを羽織った広い背中にぶつかって、鼻を結構強く打った。



ーあ、いい匂い。ー



フワリと香水の香り。


香水をつけた男はあまり好きではないけれど、ヤツの香りはなんだか好きになれそうな感じだった。


…って私変態みたいじゃん。



「ちゃんとくっついててね、飛んでっちゃうから。」



そんなヤツの言葉に自分の体勢を思い出した私は慌てて取り繕う。



「だからって急に引っ張らないで、ヘルメットで鼻ぶつけちゃったわ。」



するとヤツはあははと楽しそうに笑って、



「ごめんごめん。
でも危ないのはほんと、晶は軽いからすぐ飛んでっちゃうよ。」



女の子なら誰もが喜ぶセリフをさらりと言ってのける。


当然私も例に漏れず嬉しいわけで。



「軽くないし。」



けれど可愛く素直じゃないから照れ隠しな言葉しか返せないのだ。


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