今日は、その白い背中に爪をたてる
今まで会っていた理由が理由だったからまともな会話なんてしてこなかった私達。


こういう普通の、日常的なことをこの男とするのに私は飢えていた。



だからこんなにも口角が上がってしまうのは良くも悪くもあんたのせいなのよ、晴斗。



やがて私がヤツをウザいと思い始め返事をしなくなった頃。


どうしてそんなに楽しそうなのに俺には冷たいの〜と抱きついてきた(クーラー効いてるのに暑苦しいのは何故)ヤツを見てソウさんが笑った。



「うわあ。
晴斗が甘ったれてるの初めて見た、お姉さん何者!?」



シェイカーを振りながら私にまとわりつく晴斗をニヤニヤして見ていた。


っておい、肩に顎をのせるな。



「うるさいなあ、これは甘ったれてんじゃなくて愛でてるの。」



こいつ何首筋に顔つけてやがる。


でかい犬を無理矢理引き剥がし、何者ってなんだよと内心苦笑しながら私はどう見えます?と逆に返す。


まさか本当の関係を言うわけにはいかないし、なんだか‘‘初めて見た”と言ったのが気になったのだ。


てっきりプライベートな空間なら本命連れて来てると思ってたのに。



「晴斗より年上だよね、俺と変わらないくらいかな。
入って来た時に綺麗な人だなあとは思ったけどこうして近くで見るともっとよく分かるね。」



けれどソウさんは特に他の女性の事は口にしなかった。



「……はあ、どうも。」



そして代わりに嘘臭い褒め言葉がプレゼントされた。


あんまりさらりと褒められると軽く聞こえるのはどうしてだろうか。


ついジトッと見上げてしまう。


すると彼は手にしていたシェイカーからゴールドの液体をグラスに注ぎ、苦笑して言う。



「ごめん、そんな訝しげに見ないで。
ほんとは君のこと晴斗から聞いて知ってるよ、晶ちゃん。」



「えっ?晴斗が?」


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