今日は、その白い背中に爪をたてる
私の事話したの?


驚いて隣を見るけれど、晴斗は黙ってソウさんから渡されたグラスへ優雅に口をつけていた。



「芸能関係の仕事してるんでしょ?
その見た目だと、モデルさん?」



とんでもない!!


私は全力で首を振り否定する、と同時に職業までは言わないでくれたことに晴斗の気遣いを感じて嬉しくなった。


‘‘堂林アキラ”という人物が男か女かなんてどうでもいい、撮っている‘‘モノ”で勝負がしたい。


だから私はプロフィールを公開していないし、直接会う人以外は私の姿を見たことがないのだ。


…しかしヤツは私を‘‘どの位置”と認識してこのバーテンに話したのだろう。


聞けるわけないけど。



「んーモデルさんじゃないのか。
あ、でも芸能関係ならあの写真は知ってる?」



そう言って私達の後ろを指差したソウさん、振り返ってその指を目で追うとそこにあったのは。



「これ……」



70センチくらいの額縁の中に入った一人の男の写真だった。


ミルクティー色の髪。


口角だけうっすら上げた柔らかい笑顔は寧ろ妖艶にも見えて。


クッキリ二重の瞳は何故か強い光をたずさえて見る者を惹きつける。


少し幼さ、あどけなさを残しながらも既に大人の色気を醸し出した晴斗が、そこにいた。



ー知ってるも何も。ー



声には出さずに口の中で呟く。



「デビュー一枚目がこれって凄いよなあ。しかも撮ったのがあの堂林アキラ。」



そう、これを撮ったのは私なのだ。



「ハルトがどうしてもって言うから仕方なく飾ったんだけど、意外と店の雰囲気にマッチしてて今は気に入ってる。」



「だってこの写真だけなんだよ、俺が直視できるのは。」



知っていた、晴斗が自分の写真や映像を見るのを嫌がる人だってこと。
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