今日は、その白い背中に爪をたてる
「馬鹿みたい。」
彼の存在は、いつまでも暑い秋みたいに私の中で燻り続ける。
温かい涙が顎を伝っていく。
運転手は涙を流す私に気がついたようだったけれど、何も言わずにただ運転を続けてくれていた。
…しばらくの間、私は窓の外を見つめたまま濡れた顔をそのままに泣き続けていた。
ようやく落ち着いてハンカチで拭おうと視線を前に戻した時、視界にふと入り込んだものがあった。
「あの、これ読んでもいいですか?」
「ああ、構いませんよ。
お客様が置いていかれた物ですので、よろしければどうぞ。」
それは今週発売の週刊誌で、助手席のシート裏に差し込まれていた。
運転手の快い返事を受け、私は普段は見向きもしないものを何故だか今夜は手に取る。
そして妙に色鮮やかな文字の羅列の表紙の中、ある一節を見た途端。
ーー頭が一瞬にして真っ白になった。
一際大きな見出し。
『戸川ハルト、あの演技派女優とホテルで密会。』
私は茫然としたまま震える指でなんとかページを捲る。
そんな、という気持ちとやっぱり、という気持ちが交差していた。
指定ページを開くと見開きで大きな白黒写真が載っていて、確かにホテルの裏の入り口で口づけを交わす二人の男女が写っていた。
私はそれを目を凝らして見つめる。
噂の相手は以前から何度もあいつと騒がれている女優、顔が分かるくらいには写っているからほぼ間違いないが。
相手の男は本当に晴斗だろうか?
違っていてほしくて、どうか勘違いでいてほしくて、私は更に見つめる。
懸命に見つめた結果、証拠は見つかった。
晴斗である、という証拠が。
随分と近い距離にいなければ分からない、左目のふちにあるホクロがクリアに写っていた。
彼の存在は、いつまでも暑い秋みたいに私の中で燻り続ける。
温かい涙が顎を伝っていく。
運転手は涙を流す私に気がついたようだったけれど、何も言わずにただ運転を続けてくれていた。
…しばらくの間、私は窓の外を見つめたまま濡れた顔をそのままに泣き続けていた。
ようやく落ち着いてハンカチで拭おうと視線を前に戻した時、視界にふと入り込んだものがあった。
「あの、これ読んでもいいですか?」
「ああ、構いませんよ。
お客様が置いていかれた物ですので、よろしければどうぞ。」
それは今週発売の週刊誌で、助手席のシート裏に差し込まれていた。
運転手の快い返事を受け、私は普段は見向きもしないものを何故だか今夜は手に取る。
そして妙に色鮮やかな文字の羅列の表紙の中、ある一節を見た途端。
ーー頭が一瞬にして真っ白になった。
一際大きな見出し。
『戸川ハルト、あの演技派女優とホテルで密会。』
私は茫然としたまま震える指でなんとかページを捲る。
そんな、という気持ちとやっぱり、という気持ちが交差していた。
指定ページを開くと見開きで大きな白黒写真が載っていて、確かにホテルの裏の入り口で口づけを交わす二人の男女が写っていた。
私はそれを目を凝らして見つめる。
噂の相手は以前から何度もあいつと騒がれている女優、顔が分かるくらいには写っているからほぼ間違いないが。
相手の男は本当に晴斗だろうか?
違っていてほしくて、どうか勘違いでいてほしくて、私は更に見つめる。
懸命に見つめた結果、証拠は見つかった。
晴斗である、という証拠が。
随分と近い距離にいなければ分からない、左目のふちにあるホクロがクリアに写っていた。