今日は、その白い背中に爪をたてる
「晴斗は、このこと、」



このことって私がこれを知ってること?


それともこの女優が私の存在を知ってること?



口にしたミモザはシャンパンの炭酸がピリリと喉にしみる。



「さあ、説明する必要もない間柄なんだと思う。
本命は私じゃなくてこっちだろうし。」



恋人らしいことなんてしたことないもの、分かりきっていても改めて口にすると胸が軋むように痛んだ。


なのにソウさんって本当にいい人だ。


自嘲気味な私の肩をつかんでそんなはずない、と言ってくれる。



「晴斗はそんな奴じゃない!!
あいつは本当に君のことを大切に想ってるよ、これは何かの間違いで……」



「他の女とキスするのが何かの間違いで起こるものなの?」



微笑んで言う私にソウさんがびくりとして口を噤む。


私達の剣呑な雰囲気に周りのお客さんは少しザワザワしていた。



「いいんです、別に晴斗は私には関係ない。
もう一ヶ月以上も連絡をとってないから、あいつがどこで何してるかなんて知らない。」



「とってない、連絡を?
どうして、だって君達は、「ただのカメラマンと俳優の関係ですっ!!」



遮るように言ってからしまったと思った。


こんな、誰が聞いてるかも分からない場所で、自分と晴斗のことを言ってしまうなんて。



「え、カメラマンて、もしかして晶ちゃん、」



何も知らないソウさんは動揺して私の肩を離す。



「……もう、終わったんです。
だからソウさんが考えるようなことは何も、「終わってなんかない。」



え?


突然どこからか聞こえてきた声に、私は耳を疑った。



まさか、こんなところにいるわけが。



思い違いだと自分に言い聞かせてもソウさんのホッとした表情と呟きが、私の妄想を現実にしてしまう。



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