今日は、その白い背中に爪をたてる
ーバンッ
晴斗の握られた拳が私の背後の壁を強く殴った。
初めて見る彼の怒り。
それは私に嬉しさと、切なさと、悲しさをもたらした。
心は傷口が膿んでしまったみたいにじくじくと痛んで。
けれど壁から響いてきた大きな音が私の頭を酷く冷静なものにする。
「っ、何か言ってよ、晶……」
今にも泣き出しそうな声で晴斗は私の両肩を弱々しく掴む。
私はどんな表情で彼を見ているというのだろう。
顔の感覚がまるでなくて、自分がどういう表情を彼に向けているのかが分からなかった。
彼の表情もよく分からなかった。
ミルクティーカラーの髪が俯いた顔にかかって、よく見えない。
それでも互いに一つだけ繋がった気持ちがある。
寂しい、という感情。
…初めて会った三年前の夜。
私は当時の恋人にフられた寂しさを、彼は血の繋がる者がいないという寂しさを埋めるために。
あの店に飾られた写真を撮った日の夜、身体を重ねた。
あれからずっと、晴斗は私を‘‘埋める”為の相手と見ていると考えてきたけれど。
下なんて向かないで、顔を、見せて。
今、この時だけでいい、私の、私だけのものだって思わせて。
こっちを向いて。
「!!晶……」
そんな風に強く思ううちに、いつの間にか私の手は髪をかき分けながら晴斗の両頬を包んでいて。
ピクリともしない顔で目を合わせた。
潤んだ瞳で見つめ返してくる彼の目尻に、眉間に、鼻筋に。
口づける。
ああ、触れる度に微かに震える身体が愛しい。
「……晶。」
「なに……?」
頬に唇をつけたままこたえると、肩から落ちて宙ぶらりんになっていた彼の手が私の顔を包みこむように触れ、離した。
晴斗の握られた拳が私の背後の壁を強く殴った。
初めて見る彼の怒り。
それは私に嬉しさと、切なさと、悲しさをもたらした。
心は傷口が膿んでしまったみたいにじくじくと痛んで。
けれど壁から響いてきた大きな音が私の頭を酷く冷静なものにする。
「っ、何か言ってよ、晶……」
今にも泣き出しそうな声で晴斗は私の両肩を弱々しく掴む。
私はどんな表情で彼を見ているというのだろう。
顔の感覚がまるでなくて、自分がどういう表情を彼に向けているのかが分からなかった。
彼の表情もよく分からなかった。
ミルクティーカラーの髪が俯いた顔にかかって、よく見えない。
それでも互いに一つだけ繋がった気持ちがある。
寂しい、という感情。
…初めて会った三年前の夜。
私は当時の恋人にフられた寂しさを、彼は血の繋がる者がいないという寂しさを埋めるために。
あの店に飾られた写真を撮った日の夜、身体を重ねた。
あれからずっと、晴斗は私を‘‘埋める”為の相手と見ていると考えてきたけれど。
下なんて向かないで、顔を、見せて。
今、この時だけでいい、私の、私だけのものだって思わせて。
こっちを向いて。
「!!晶……」
そんな風に強く思ううちに、いつの間にか私の手は髪をかき分けながら晴斗の両頬を包んでいて。
ピクリともしない顔で目を合わせた。
潤んだ瞳で見つめ返してくる彼の目尻に、眉間に、鼻筋に。
口づける。
ああ、触れる度に微かに震える身体が愛しい。
「……晶。」
「なに……?」
頬に唇をつけたままこたえると、肩から落ちて宙ぶらりんになっていた彼の手が私の顔を包みこむように触れ、離した。