今日は、その白い背中に爪をたてる
すると分かりやす過ぎるくらいに怯えた瞳をする晴斗。


変な人だ、強気なんだか弱気なんだか。


ここでキスの一つでもされたら私なんて呆気なく陥落してしまうのに。


でも、敢えてこういう場面でそんな色男みたいなことをしないのが晴斗らしいと思った。



「……どうしたら許してくれる?」



目尻を撫でるように拭いながら晴斗は優しく聞く。



もう、許すも何も。



なんであんたの方が捨てられそうな犬みたいな顔してるのよ。


とてもイケメン俳優とは思えない情けない表情につい泣きながら笑ってしまった。



「ふふ、情けない顔。」



「……だって、」



晶には嫌われたくないよ、俺、と言われて柄にもなくキュンとする。



私は少しイジメ過ぎたかもと反省して(だけど元はと言えば晴斗が悪いのだから大目に見て欲しい)、晴斗の両頬を包み込んだ。



「ねえ、教えて?」



一瞬、彼の目が見開かれる。


けれどすぐに言葉の‘‘意味”を理解したらしく私の手の上には彼の手が重ねられた。



「ずっと待たせてごめん。
俺は、晶の事が……「Stooooop!!」



え。


いきなり遮った声に私達は見つめあったまま固まる。


左側からのただならぬオーラを感じて恐る恐る見やれば、腕組みをしたクロウが優しくない笑みで立っていた。



「あ、と、は、他所でやってくれるとありがたいな?」



「あ…」



その一言に、自分がどこで何をしていたかを思い出して青ざめる。


そろりと目だけ動かせば周囲はグランドスタッフやら利用客やらで囲まれていて。


私達は、どちらからともなく手を繋いでそそくさと空港を後にしたーー。




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