俺様常務とシンデレラ

常務の代理として少し緊張しながら秘書室を出た私に、香乃子さんが教えてくれた。


『秘書はボスの考えを誰よりも理解していなくちゃダメなの。ボスの考えていることを、社内外の様々な人に、正確に発信するのも秘書の役目だから』


だからがんばってね、と可愛らしいウインク付きで送り出されてから、私は何度となく思い出している。

常務が東堂会長にお願いして、ウエディングプランの料金を下げてもらったこと。


どんな女の子にも、おとぎ話のような恋を、夢に見てもらえるように……。



そのとき、ロビーの小さなソファに座る私のすぐ横に、スッと立つ人の気配がした。

慌てて顔を横に向ければ、濃紺のスーツに細身の身体が目に映る。


きっ、来た……!


私は電光石火の速さで立ち上がって、ガバッと勢い良く頭を下げた。


「あっ、は、はじめまして! 葦原大和の秘書を務めております、佐倉絵未と申します! 今日はどうぞよろしく……」

「親父とのおかしな約束を条件にプランの料金を下げろとか言ってきた秘書はお前か!」

「え、えぇ?」


丁寧に腰を折った上からいきなり雷を落とされて、私は困惑して頭を上げる。

長い脚。

上質な濃紺のスーツ。

引き締まった細身の身体。

そして、尖った顎に……。
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