俺様常務とシンデレラ
「あ……あっ、ああぁーーー!」
こ、ここ、この男は!
「うるさい! 声がデカイんだよ、この泣き虫!」
「なっ、な、泣いてませんっ!」
あの夜泣いちゃったのは、アレだ!
常務がいつになく優しく甘やかしてきたから泣いただけだ!
断じてこの男のせいではなーいっ!
ひょろりと背の高い男は、随分と上の方から偉そうに、鋭い瞳で私を見下ろしている。
薄い肉付の頬、シャープな顎、高い鼻と切れ長の冷たい目。
厳しく、精悍な顔つきのその男。
それは、帝国葦原館でのパーティーの夜に、私をソファに押し倒して手のひら越しに唇を押し付け、終いには『現実を見ろ』と捨て台詞を吐いた男だった!
「ふん、"王子様"だの"シンデレラ"だのおめでたいこと吐かす奴だとは思ったが、お前があのいけ好かない男の秘書だったわけか。どうりでな」
「ちょっと! "いけ好かない男"ってまさか常務のこと言ってるんですか!?」
むきーっ!
許さんぞ、この男!
確かにあなたが見てる常務は外面モードの、腹ん中では黒いこと考えてる常務でしょうけども!
私を仁王立ちで見下す男に怯むことなく、私も腕を組んで下からムキッと睨み返す。