俺様常務とシンデレラ

2週間後のオープンにむけて、ロビーで仕事をしていた数名のスタッフが、突然バチバチと火花を散らしはじめた私たちを、何事かと遠巻きに見ている。

オープン前の落ち着いた静かなロビーでは、やいやい言い合う私たちの姿は、完全に浮いていた。


いや、それにしても!

それにしても信じられない!

この冷酷男が、ラーメン大好きで優しくぽわんとした東堂会長の息子だなんて!


これは全く信じたくない事実だが、認めざるを得ない。

たった今、その事実を前に思い出したのだ。

厳しい雰囲気に、精悍な顔つき。



この男、東堂会長の痩せてる頃の写真にクリソツだーっ!



「ふん、ちょっと主人の悪口言われたからってぎゃーぎゃー吠えやがって。犬か」


冷酷男はそう言ってから自分の言葉に片方の眉をピクリと上げ、少し思案してから、妙に納得したような顔になった。


「さてはお前、あの男に食われたな? いい趣味してるぜ。あの仮面みたいな表情でやることヤるのかと思うとゾッとするわ」

「なっ、く、やや、や……!」


東堂社長のあんまりな言い草に、陸に上げられた魚のようにパクパクと必死に口を動かすが、上手に酸素を取り込めない。


この人、うら若き乙女に対してなんてこと言うの!

うぅー!

でも半分事実だから否定もできない!
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