俺様常務とシンデレラ
「お酒を飲んで、語らい合って、出会った男女は手を取り合い踊り出す! それがパーティーの醍醐味さ!」
腕を広げて高らかに宣言した草十郎さんは、ホールの隅にいる演奏隊のほうへぴゅーんと走って行った。
私と常務がお互いに目を合わせて首を傾げていると、しばらくしてから小さく流れていた演奏が止み、少しの間をおいて優雅なワルツがはじまる。
私でも知ってる、チャイコフスキーの有名なワルツだ。
私はもちろん、この曲に聞き覚えがある。
だけど、なんだかそれだけじゃない……。
なにかもっと強烈な印象をまとう音楽として、私の心を小さく揺らしはじめた。
そうこうしているうちにぞろぞろと人が動いて、ホールの真ん中にスペースができる。
人々の視線は、当然のごとく、このパーティーの主役たる衣装で着飾った私と常務に注がれていた。
え……なに……?
本気なの?
本当にワルツとか踊るの?
おろおろとして逃げ腰になる私の右手を、常務がそっと握る。
黒い瞳がまっすぐに私を見つめている。
こ、ここは逃げちゃいます?
逃げますよね?
私は祈るような気持ちで常務を見返したのに、常務は満面の笑みで無邪気にニヒッと笑った。