俺様常務とシンデレラ
「踊るか!」
「ええっ! む、ムリムリムリ! ムリです! 私ワルツとか踊れません! 意味わかりません!」
なぜかルンルンと上機嫌になってしまった常務は、私が持っていたブーケを取り上げて、近くにいた人に適当に押し付けると、私の手を引いてホールの中心へ進む。
そしてぶんぶんと首を振って拒否する私にお構いなしで、背中に手を添えてくるくると回りだした。
会場中の多くの人の視線が背中に集まり、私はさらに緊張して息ができなくなる。
て、手汗かきそう……!
常務は私の手をぎゅっと握って放してくれそうになく、本気でワルツを踊るつもりらしい。
「できてるじゃないか。お前にしては、なかなか器用だ」
すぐ近くから私を見下ろす常務は、意地悪く笑ってからかうようにそう言った。
「ぜ、絶対すぐに足踏んじゃいますから! 怒らないでくださいね!」
私が緊張と羞恥で混乱しながら涙目で言い返しても、常務は楽しそうに笑うばかりだ。
管弦楽器が紡ぐ糸のように繊細な音は、束になって力強く流麗な音楽になり、私の足を弾ませる。
ロマンティックなワルツと上品に飾り付けられたホール。
踊っているのが自分じゃなければ、私もうっとりとしてしまうようなシーンだったに違いない。