俺様常務とシンデレラ

最近めっきりガードの緩くなった常務は、みんなの輪の中で私をくるくると回しながら無防備に笑っている。

鉄壁の仮面だった王子様モードは、もうほとんど見せない。

いきなり全ての人に本当の常務を見せることはできなくても、極端すぎるほどの外面ではなくなってきているのだ。


このまま、少しずつ。

少しずつ、本当の常務を好きになってくれる人が増えたらいいね。


おとぎ話にもでてきそうな、目眩がするほど素敵な会場を、ワルツが満たしていく。

私たちはそのワルツに合わせて、くるくると踊っている。

柔らかな光を浴びた常務が、間近で私を見下ろしている。



ああ、まただ。

また、この感じがする。

こうして柔らかな光の中で、私を見つめる常務を、どこかで見たような気がする。




私はこうして、常務と一緒に踊ったことがあるんじゃないだろうか。




そう思った瞬間、常務の黒い瞳が優しく微笑むのを見て、私はその漆黒に吸い込まれた。



* * *



私は3歳の頃、母に連れられてある教会で行われたリサイタルに行ったことがある。

だけど幼かった私はクラシックなんて退屈なだけだったし、じっとしていられなくて、演奏中にこっそりと教会を抜け出したのだった。
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