俺様常務とシンデレラ
「え? あれ?」
私は目の前の光景に首を傾げた。
ローテーブルの周りに置かれた、黒い高級そうなソファーが3つ。
私から見て正面の小さな一人掛けのソファーには、いつも通り王子様モードの微笑みを浮かべた常務。
だけど、右側の二人掛けのソファーに座っている人は……。
「あ、あのぉ……」
私はそろそろとそのソファーに座る人物に近付いて、そっと声をかけた。
常務が私の行動に驚いて目を丸くし、ギョッとした顔で私を見ている。
あ、その顔、ちょっと素になってますよ。
「ん? きみは……」
ソファーに腰掛けていた男性が私の声に反応して、振り返る。
その男性はふくよかで恰幅のいい身体をダークグレーのスーツに包み、頬にはたぷたぷとお肉が付いている。
細められた目は鋭さなんて感じさせず、どこにでもいる優しいおじさんという印象だ。
この人、東堂会長じゃないんじゃない?
写真とぜーんぜん違うもん。
それに、むしろ、このおじさんって……