俺様常務とシンデレラ

「ああ! 絵未ちゃんじゃないか! 猫丸の看板娘の!」

「きゃー! やっぱり! いつも金曜日にいらっしゃってたおじさんですよね、ふふふ、何してるんですか? こんなところで」

「絵未ちゃんこそ何してるんだい、この前行ったら突然辞めたって店長が言ってたから、心配してたんだよ。しかめっ面の親父が出すラーメンじゃ味気ないんだ」


ふふん! ほらね、やっぱり!

そのおじさんは私の以前のバイト先である、『ラーメン猫丸』で毎週金曜日の夜に現れる常連さんだ。


たぷたぷと揺れる顎とお腹のお肉が可愛らしくて、いつもニッコリと微笑んでいるおじさんは、私の中でも大好きなお客さんのひとりだった。


特別たくさんお話をしたことはなかったけど、"絵未ちゃん"と呼んで私に声をかけてくれるし、ラーメンを美味しい美味しいと言って食べてくれる素敵なおじさん。

因みに、お気に入りのメニューはとんこつラーメンだった。

トッピングはコーンとバター。




「いやあ、なんか大和くんに呼ばれちゃってね。彼、僕の友だちの息子だし、頼まれると断れない性格なんだよね」

「え? 葦原会長とお友だちなんですか?」


なんで? なんの知り合い?

てゆーか、東堂会長はどこに行ったの?


「佐倉さん、いいからとりあえず、きみもそこに座ってくれるかな?」


きゃぴきゃぴとお話する私たちの間に、常務の声が割り入ってきた。
< 47 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop